フォーチュン
そのまま左手をワナワナと震わせるユーリスからは、はっきりと苛立ちが感じ取れる。
周囲にいた者たちは皆、思わず2歩後ずさってしまったほどだ。

実際には、複雑且つすれ違いな現状に対して、そして、アンジェリークが彼女の姉であるアナスタシアと自分が相思相愛だと思い込んでいる事実に対して、それらを招いた己にユーリスは苛立っているのだ。

他にも複雑さを招いた事情はあるが、それはもう済んだこと。
それらばかりを責めても、アンジェリークが戻ってくるわけではない。
とにかく今は、アンジェリークを見つけ出す事が、俺にとっては最優先事項となった。

「ユーリス様・・・」
「アンの想い人とは俺のことだ」
「・・・は?」

ヴィヴィアーヌとアントーノフは、もう政治的立場はそっちのけで、今はアンジェリークの両親としてふるまう余裕しかなかった。

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