フォーチュン
「あたしがつんだのよ。きれいでしょー」

そこにある、小さな透明のグラスにちょこんと活けられた一輪の蓮華の花を見て、アンジェリークの心がふと和む。
アンジェリークはメルにニッコリ微笑みながら、「本当に綺麗ね」と言った。

晩ごはんは、根菜がたくさん入ったスープと、ヤンの両親からもらったパンに、好みでハーブ入りバターを塗ったり、チーズをはさんで食べた。

「とても素朴な味。美味しいわ!このとろみはどうやって出しているの?」
「じゃがいもを煮崩してるのよ。うちではいつもそうしてるの。おかわりあるから、ほしかったら遠慮なく言ってね」とハンナは言いながら、ヤンのおかわりをよそいに行った。

アンジェリークは、いわゆる家事をしたことがない。
皇女だからといって、毎日豪勢な食事を摂っていたわけでもない。
ハンナたち同様、普段から簡素な食事を適量、且つ優雅に摂ることを、両親から教わった。

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