フォーチュン
グリア国まで乗せてくれたのは、恰幅の良い親切な男性だった。

アンジェリークの父親ほどの年齢と思われるその男は、「過去何度もトゥネリとグリアの国境を越える“手伝い”をしているベテランだ」とアンジェリークに得意気に言った。
2000ルキアという金額も、相場だと言われればそれまでだし、荷台に身を潜める場所を、それとなく快適に作ってくれていたのも、やはりベテランだからかなと、アンジェリークは思った。
但し、国境の門を越えて、ここまで来ればもう安心だという場所まで来たとき、「俺の仕事はここまで。じゃあな」と言って、さっさと行ってしまった。

あくまでもビジネスライクに徹し、必要以上の情けをかけないこと。
それは、秘密裏に違法の手伝いをしている者としては、当然の心理だと解釈することもできる。
しかし、最初に出会ったハンナたちが、とても良い人だったからか、現実の一面をまざまざと見せつけられた気がしたアンジェリークは、少しばかり気持ちが沈んでいた。
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