フォーチュン
ユーリスは、街の中心にある「生命の木」へ、誘われるように来ていた。
木の幹にそっと右手を当てる。
しかし、今回も生命の木の「声」を聞くことはなかった。

私情が絡み過ぎているのか。
それとも俺の雑念が多すぎるのか。
なぜ声が聞こえない。
なぜ生命の木は、アンジェリークの行方を教えてくれないんだ!

ユーリスは右手をこぶしに握ると、「くそっ」とつぶやきながら、生命の木に軽くパンチをお見舞いした。

「王子っ!なんて罰当たりなことしてるんですか!」
「罰ならもう当たっている。それに街中では王子と呼ぶなと言ってるはずだが」
「・・・すみません」
「いや。おまえにまで八つ当たりをしてすまないな」
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