フォーチュン
「すぐ戻る。それを脱いでおけ」
「は、はい」

そうよね。
これはユーリス様の正装上着なのよ!
汚したり皺くちゃにしてしまったら大変だわ!
・・・袖を曲げてしまったけど。

アンジェリークはすぐ立ち上がり、ユーリスが貸してくれた上着のボタンに手を伸ばしたとき、ユーリスはすでに部屋から出ていた。
とはいっても、部屋のすぐそばで待機していたコンラッドと、いつの間にか来ていた官吏のフレデリックに指示を与えていただけなのだが。

「コンラッド」
「はっ」
「俺の代わりに父上に報告をしておけ」
「かしこまりました、ユーリス様」
「それからフレデリックよ」
「はい、ユーリス様」
「俺は今から朝までアンジェリークとともに自室(ここ)にいる」

「だから邪魔をするな、何人も部屋へ近づけるな」という言外の命を、フレデリックとコンラッドはすぐに察した。
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