フォーチュン
ⅩⅩⅨ
マチルダが座っていた場所にユーリスが座ると、アンジェリークもそれに倣って、座っていたところへ腰かけた。

「おはよう、アン」
「あ・・あ、おはようございます」

そういえば、朝の挨拶もしていなかったと、アンジェリークは今頃気がついた。
身近に座っているユーリスに見とれているアンジェリークの心臓は、いつもより鼓動が忙しなく鳴っている。

「食事は済んだか?」
「はい。とても美味しいクロワッサンをいただきました。まだ温かくて、外の皮はパリッとしていて。それからレモン水も・・・バルドーにいた頃飲んでいた味と同じで・・・ありがとうございます」
「礼などいらん。それより退屈ではなかったか?」
「え?いいえ、全く。マチルダから楽しいお話をたくさん伺いましたので、時間が経つのを忘れていました」
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