アイ・ラブ・ユーの先で
これからどこに行くのだろう。
財布や着替えがなくても困らない場所とは、いったいどこだろう。
朝までふたりでいっしょに過ごすのかな。
それって、いったいどういうことなんだろう。
かなりマズイことをしていると思う。
正常な判断ができていないと、頭の片隅でもうひとりの自分が警鐘を鳴らしている。
だけどそんなサイレンは他人事みたいに、程遠い場所で鳴り響いているように思えてならなかった。
徐々に薄くなりつつある雲の切れ間から、欠けた月だけがわたしたちを見下ろしている。
「ねえ先輩、しょうもない話してもいいですか」
信号待ちのとき、大きな背中にむかって声をかけた。
エンジン音にかき消されてしまって、聞こえてなくともべつにかまわないと思った。
「さっきね、公園でひとりでいたとき、電話がかかってくる直前くらいかな。なぜか、なんとなく、ふと先輩のこと思い出したんですよ」
先輩は返事をしない。小さな声だし、本当に聞こえていないのかもしれない。
「なんでかなって思ったんですけど、その理由、いまわかりました」
これを言ったら先輩は怒るかも。
でも、どんな生意気なことを言っても怒らずに笑い飛ばしてくれる人だということを、わたしはもう知っている。
「先輩って、ちょっとティラノサウルスに似てますもんね」
「は?」
あ、ちゃんと聞こえていたみたいだ。
全体重をあずけるみたいに、背中に頬をくっつけたら、太い背骨が耳にぶつかって少しだけ痛かった。