アイ・ラブ・ユーの先で
「入学してすぐのときもさ、下駄箱で、水崎先輩のこと見つけて反応してたじゃん」
「ああ、そういや、そんなこともあったね」
「ええー。てっきり好きなのかと思ってたけど、その反応、チガウの?」
どんな人なのだろう、と不思議に思っているのは本当だけど、それがイコール恋なのかと言われたらそれは絶対に違う。
だから、チガウと断言したら、結桜は少し残念そうな、それでいてほっとしていそうな、なんともいえない微妙な顔で「ふうん」と唸った。同時にかわいいタコさんウインナーが小さな口に吸いこまれていく。
あれから1か月ほどが経とうとしているけど、入学式の一件以来、水崎先輩とはこれといった接点をもてずにいた。
次の春には卒業してしまう3年生と、ついこないだこの場所にやってきたばかりの1年生とでは、関わることのできる機会があまりにも少なすぎる。
教室の位置も、校舎の階層できっちり学年ごとに分けられているから、2階の3年生と4階の1年生が日常生活のなかですれ違うことのほうが稀だ。
たまに全校総会なんかの学年を超えた催しがあっても、水崎先輩を見かける頻度はまばらだった。
どうやら彼は噂のとおり、本当に学校には来たり来なかったりしているらしい。
それでも無意識に、それとなく彼の姿を探してしまうのは、どうしてだろう。
万が一にも見つかってしまったらシメあげられるかもしれない、という恐怖のせい?
これは、先にこちらが見つけて接触を回避しようとする、防衛本能からくるものかも。
いや、絶対にそれだけじゃないということ、ちゃんとわかっている。
水崎先輩を見かけるたび、声をかけたいような、かけられないような、見つかりたいような、見つかりたくないような。そういう相反する気持ちが、体の真ん中で、いきなりものすごい勢いをもって喧嘩しはじめるから。