漂う嫌悪、彷徨う感情。

「横入りって・・・そんな言い方なくないですか??」

「・・・ゴメン。 でも、美紗の仕事なのに・・・」

確かに言い方は良くなかった。 さっき、美紗に誤解を与えただろう小田さんに苛立っていたから、ちょっと言葉に棘があったと思う。

だけど、今ある誤解を解くのにも手を焼いているのに、更なる誤解を吹っ掛ける小田さんを煩わしく感じて、謝りながらも余計な言い訳を付け足してしまった。

「・・・本当は『横取りするなよ』って言いたかったわけだ。 ・・・酷いですね。 でしゃばってすいませんでした」

小田さんが、オレから渡されたファイルをオレの胸に押し返した。 そして小田さんもまた、走って事務所を出て行った。

「・・・あぁー!! もう!!」

ファイルを小脇に挟み、頭をぐしゃぐしゃ掻くと、誰にも手伝ってもらえなくなったプレゼン資料作りを1人でするべく、自分のデスクに戻った。
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