漂う嫌悪、彷徨う感情。

結婚の報告をすべく、美紗を実家に連れて行く事に。

オレの両親と美紗は、外で何回か食事をした事はあるが、美紗を実家に入れるのは今日が初めて。

美紗は玄関の前で足を止め、肩も頬も強張らせて緊張しきっていた。

「イヤイヤイヤ。 オトンとオカンには何回も会ってるじゃん」

ガッチガチに固まる美紗の肩を揉むと、

「・・・そうだけど、妹さんに会うのは初めてじゃん。 変な印象持たれない様にちゃんとしなきゃ」

美紗はオレの手を乗せたまま、肩で大きく深呼吸した。

「大丈夫だよ。 気合うんじゃん?? 美紗と妹、タメだし」

今度は美紗の背中を摩って落ち着かせようとすると、

「だといいな。 勇太くんの妹さんだもんね!! いいひとに決まってるもんね!! 仲良くしたいな」

美紗が笑顔を作り、オレを見上げた。

まだちょっと表情が硬いけれど、笑顔を作れるようになった美紗に笑い返し、インターホンのボタンを押した。

大丈夫。 こんなに素敵な美紗を、妹が嫌うわけがない。
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