漂う嫌悪、彷徨う感情。

「下からなんですね。 上から見下ろせばいいじゃないですか」

「ほぅほぅ。 身長160cmのオレに上から・・・。 ほぅほぅ。 どうやって?? いちいち椅子の上に登れとな??」

髪の毛の次は自分の身長を持ち出して、自虐しつつオレを突っつく部長。

部長は、髪と背丈を話題に笑いを取りつつ営業してきた人間の為、実はそれほど髪の事も背の事もコンプレックスとは思っておらず、むしろ『おいしい』と思っていそうな人だ。

そういう考え方をする人だから、仕事相手も『この人と仕事をしたいな』と思うのだろうし、部下も部長を慕うのだと思う。

未だかつて、部長の悪口を言っている人間に出会った事がない程に、部長はやっぱりチャーミングなのだ。

「・・・で?? なんで過去の話が出てきたの?? なんか、良からぬ過去の事実が発覚して揉めてるとか??」

そんな部長から鋭い指摘をされた。

チャーミングで仕事が出来る部長は、ふざけている様でしっかり人の話を聞いている。
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