素直の向こうがわ



「河野先輩って凄いんですよ。中学の時から人が嫌がる仕事とか黙って引き受けて。成績はいつもトップで、でもそれをひけらかすこともなく、ずっとコツコツ地道に努力してた人なんです。そういう人なんですよ。なのに、なんで? なんであなたみたいな人なの? 一体どんな手を使ったんですか!」


脇坂さんはずっと河野を見て来た。
そのやるせない気持ちが痛いほどに伝わって来て、言葉なんて何も出て来ない。
きっと、言葉なんて何の意味もない。


でも――。


「私もちゃんと河野のこと好きだから。隠していたことは謝るけど、河野を好きになったことは謝らない。それだけは伝えておきたかった。時間取らせてごめんね。じゃあ」


それだけははっきりと伝え、私は脇坂さんに背を向けた。


「私は絶対認めないです。それに、諦めない!」


背後から聞こえて来た脇坂さんの言葉に胸の奥が軋む。

もしかしたら、私みたいな人間じゃなければ彼女も許せたのかもしれない。

でも、私はもう河野のことは諦められない。

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