素直の向こうがわ
「5班、全員揃いました」
眼鏡男の報告に、担任が私たちの顔を一人一人見回す。
「よし、じゃあ気を付けて行って来い」
「はい」
返事をして、あたかもこれから一緒にまわりますというような顔で眼鏡男の後ろに続く。
駅前の大通りを歩き、点呼を取っている集団が見えなくなってから眼鏡男が立ち止った。
「じゃあ、俺らは決めたルートで行くから、アンタたちは集合時間の10分前にこの場所に戻って来いよ。時間厳守だぞ」
その目はこちらに向けられているようで、私たちを見ていない。そんな気がした。
その感情の動きのなさに、そもそも自分の存在など認識されていないのではないかと思う。
大きな神社へと続くその大通りを歩き出した眼鏡男の背中を、ただ黙って見つめていた。
シワ一つない制服のシャツの白さに、おまえとは違うと言われているような気がした。
「じゃあ、私たちも行こっか」
真里菜の声で、そんなことを思った自分を心から追い出した。