素直の向こうがわ
慌ててそれをキャッチすると、河野が「じゃあな」と言ってそれには触れずに行ってしまった。
なんだろう、これ……。
手の中にある小さな紙袋。
袋から手のひらに中身を出してみた。
それは、シンプルだけど綺麗な茶色をした髪留めだった。
控えめに散りばめられたカラーストーンがかわいらしい。
これって、河野が思う私のイメージ?
そう思うとなんだか恥ずかしくなる。こんなに私は綺麗じゃない。
でも、どうして――。
袋の中に小さな紙が入っていた。
(渉と一緒に選んだ。毎日の弁当のお礼と勉強頑張ってるご褒美。でも、もっと頑張れよ)
「だから、こういうのどういう顔して買いに行ってるのって……」
嬉しくて嬉しくて、一人中庭で嬉しさを噛みしめた。
そんな私を見た人たちからはおかしな人だと思われたかもしれない。
一人、ニヤニヤしながら足をばたつかせる私は明らかに不審者だ。