偽王子と嘘少女
「あれ、どうした? 掃除終わるの早いねー」
いつもの笑顔が、私への優しさが、私を不安にさせて行く。
希子のことをなんでも知っている、そう思っていたのは、私だけなのかな。
「今日は一緒に帰ろ? 玄関で待ってるね」
それだけしか言えなかった。
それだけしか言わなかった。
私たちの関係に、きっと余計な言葉はいらない。
「珍しいね、かぐやから誘ってくるなんて。話したいことでもあるわけ?」
靴を履き替えながら、昇降口へ向かう。
「うん。それがね…」
正直に話してしまってもいいだろうか。
友達を疑っているようで、心が変な感じ。