キミと私の好きなヒト
実加は私のコンプレックスの象徴であり、憧れでもある。
私は実加みたいになりたいと思っていて、それほど私たちは重なる部分がなかった。
それなのに、両親でさえ似ていないと言う私たちを間違える人がいる。
それは、実加と私の好きな人────三木 徹(みき とおる)くん。
実加と同じクラス、つまり私の隣のクラスの彼は、実加と同じで周りに人が絶えない。
私が話しているのが奇跡のような人なんだ。
そんな彼が口にする似ているという言葉。
他の人が言ったなら素直に喜べたと思う。
だけど他でもない、三木くんが似ていると言うから、私は好ましく思っていた実加と同じ自分の顔がいやになった。
私自身も知らない実加にはないところ、それもいいところを見つけて欲しかった。
そして「君はちゃんと素敵だよ」って教えて、安心させて欲しくなった。
〝理加〟なんてもうやめたい、〝実加〟になりたい、でも、なりたくない。
そう思ってしまう自分が嫌いだった。
歪んだ自分に気づかされるあの人の言葉も嫌いで。
そのくせばかみたいで、どうしようもないことに、やっぱりどこか……好きだとも、思っていた。