キミと私の好きなヒト








それは、高校1年生の春。

クラスに慣れ、そして周りの人が実加のことを実加と、私のことを澤田さんと呼ぶようになった。



小学生の時は男子も女子も関係なく下の名前で呼ばれていたけど、中学生くらいからは交友関係の浅さから私の名前は呼ばれない。

それに慣れていたし、仕方がないと思っていた頃。

実加に貸したままの数学の教科書を返してもらうために隣のクラスに顔を出した。



「実加ー」



名前を呼んで、ひょこりと顔をのぞかせる。

きょろきょろと視線を漂わせても見当たらない。

どうせおやつでも食べているんだろうと思っていたのに、実加の友だちはいても彼女自身の姿はない。



どうしようかな、と思っていると、



「呼んだ?」



首を傾げて不思議そうに、目の前に人が立った。



「三木くん……」



彼は実加のクラスメートで、彼女と仲がいい明るい男の子。

誰にでも気安くて、私のことも理加と平気で下の名前を呼んでくる。

周りをよく見ていると実加は褒めていたけど、私はそうは思わない。



だって彼は、私と実加を間違える。






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