キミと私の好きなヒト
「あれ、実加だと思ったのに理加だ。
どうかした?」
「私は実加のことを呼んだだけで、三木くんのことは呼んでないんだけど……」
「そっか」
目をそらしてたどたどしく言葉を紡げば、今だって彼は廊下に出てきてぬけた反応を返してくる。
実加と三木。
確かに似ているけど、私は三木くんのことを呼び捨てにするほど親しくない。
そもそも実加は彼のことは下の名前で呼んでいる。
実加が実加自身のことなんて呼ぶはずないし、いくら声質が似ていても私たちの声はトーンが違うのに。
それなのに三木くんは、また勘違いしているんだ。
「実加は購買におやつ買いに行ったはずなのにおかしいなって思ってたんだ」
実加がいない理由がわかると同時に、それでよく間違えるなと少し呆れる。
やれやれ、とため息をこぼせば言い訳を口にするでもなく、三木くんはふにゃりと笑った。
「それにしても実加と理加って、本当によく似てるよね」
話すことが苦手なだけでなく、人と目をあわせて話すことも苦手な私が珍しく、予想もしなかった言葉に勢いよく彼を見あげる。