彼女が指輪をはずすとき
いまこの瞬間。
私と彼のふたりきり。

こんなにすぐそばに、彼が座っている。
心臓の音が聞こえてしまうんじゃないか。
私が彼にドキドキしているのに気づかれてしまうんじゃないか。

そんな思いに駆られ始める。

隣の彼を見つめたいのに、私の顔が真っ赤で恥ずかしくてどうしても見れない。
彼がどんな表情をして私の隣に座っているか気になるのに。

"好きです"

今にもそんな言葉が零れ落ちてしまいそうで。
隣に座っているだけで、彼への好きが溢れ出してしまいそうで。

ああ。
ずっとこのままで。
時間が止まってしまえばいい。

『ひかり』

そう呼ばれて、私ははっと現実に引き戻される。

『はい』

彼は少し間を置いてから、話を続けた。

『ひかりは、俺のことどう思ってる?』

『…え?』

思いがけない言葉に、私の胸が高鳴った。
彼はいつものような笑顔ではなく、真剣な眼差しに少し火照った顔で私に言った。

それって、どういう意味?
私が朝日先輩を好きかどうか聞かれてるってこと?
それは"like"で?"love"で?

『ええっと…』

私は頭の中が混乱し始めていた。

いまこの瞬間"好きです"と言えば、彼との関係は変わるのだろうか。
でももし、"like"のほうだったら?
私だけが勘違いして、彼を困らせてしまう。

『私は…』

うつ向いていた顔をあげ、私は笑ってこう言った。
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