意地悪な片思い

「市田さんはお酒好きですか?」

「いえ、あまり。
調子に乗ってやけになってた時にお酒飲みすぎちゃったんですけど、

一緒に飲んでた人に迷惑かけてしまって。
あ、内川くんと長嶋さんなんですけど、飲んでた人って。」
 私は隣に座る内川くんの様子をうかがった。

彼の左隣に座る男性社員の人と陽気に喋っていて、私たちの会話は聞こえていないみたいだった。一方の長嶋さんは遠くの方でベテランの社員さんに捕まっている。
あの様子だと……当分そのままだろう。

「そうなんですか。」

「はい。お酒強いとたくさん飲めて楽しそうで羨ましいです。」

「そんなこともないですけどね。
僕もヤケのみ経験ありますけど、食べたものとか全部戻しちゃって大変でしたよ。

市田さんは、そんなことありました?」

「いえいえ、さすがに戻すまではなかったです。」

「ならよかった。缶ビール1本ぐらい飲むのがちょうどいいですよ、本当。」
 彼は笑ってお酒を含む。

「かもですね。」
 つられて私も笑い返した。

「でも、残念だな。」

「何がですか。」

「お好きだったら、口実になったのに。

じゃぁ今度一緒にお酒飲みしませんかって。」
 彼はごくっとお酒を再び喉に流した。

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