意地悪な片思い

越えた3か月


「で、付き合い始めたの?」
 単刀直入に遥が言った。


 速水さんの看病をしたという報告の電話をつい先日もしたばかりなのだが、この日も決まって話題になるのはその人のこと。

報告っていっても気心が知れた彼女にさえ、言ってないことは盛りだくさんだけどね。


お泊りとか、ハグとか、キスとか。

言っちゃったら最後、からかわれるに決まってるから。




「…まだだよ。」
 私は電話を受ける耳を変えながら、ベッドに座り込む。

ついているテレビの左上に表示された時刻が、丁度22時であることを教えてくれていた。

「はーまだなの?」

「まだなの。」

「だって好きって言ってもらえてるのに。」

「そ、そうなんだけどね。」
 私の脳裏にはその人を呼び出して、彼とゆっくり話したあの夜の給湯室でのことが思い浮かんでいた。


「この間だって飲み二人でやっといけたんでしょ?
その時、みのり、告げる予定だったんじゃないの?」

「うーん、そうだったんだけど……」


 私は約一週間前の金曜日の夜のことを思い出す。
5人で飲んでから1か月ぐらい経ってようやくふたりで飲みに行けた、その日のことを。

「ごめんな、一緒に飲めるの遅くなって。」

「いえ。」
 会社近くのバー。こじんまりとした、隠れ家的なお店。暗いライトの中で私たちはカウンターに並んで座ってる。

速水さんの仕事が特に忙しくて、なかなか飲みに来れなかったんだ。
こうして話すのも、飲み会以来。

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