クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
しばらく時間が経過し、駅前を通る人の数もさっきよりは減ってきた気がする。

……さっきは勢い余って、いきなり電話しちゃったけど、小野原さんの駅まで行った方が良かったかな……?

でも、もう移動してるかもしれないし、家じゃなくてどこか違う所にいたかもしれないし、今から連絡しても遅いよね……。

と、いろいろ考えてると、外に店員が出てきて、看板を片付け始めた。閉店間近らしい。

ここだと、邪魔かな……。

私は、その場を離れて、人通りの少ない所に移動した。

……小野原さんに会ったら、何があったか、絶対に聞かれるよね……。

それに、泣いた理由も……。

泣かずに、ちゃんと話せるかな……。





突然、風が強く吹き抜け、思わず身を小さくした時。

「……!」

背後から誰かに抱きしめられた。

この温もり……知ってる。

振り向かなくても、分かる。






「体が冷たい。ちゃんと言い付けを守らなかったな?」

私の冷えきった耳に、小野原さんの熱い息がかかる。

……来てくれた……。

それだけで、また涙がこぼれそうになる。

でも、必死にこらえようとした努力の甲斐もなく、ポタポタと滴が頬を伝った。

小野原さんは、腕を離し、私の正面へ回ると、何も言わず包み込むようにまた抱きしめてくれた。

「……ぅぅっ……だ、だめです……な、涙で、ぐちゃぐちゃ……小野原さんの……服が……汚れ……ます……」

「そんなの気にしなくていい」

私に回されている腕に、さらに力がこめられる。

駅から少し離れた場所とはいえ、人通りがないわけではない。

いつもの私なら、こんな所で抱き合うなんて、断固拒否していただろう。

でも、今は気にならなかった。

この人の温もりが欲しくて、他のことは何も考えられなかった……。


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