クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
カラオケを出て、すぐにバッグから携帯を取り出して、小野原さんに電話をかけた。

スマホ画面の時刻は、もうすぐ十時になるところだ。

もう寝てるかもしれない……。

数回のコール音の後、小野原さんが出た。

『もしもし、香奈か?』

「……こんばんは」

『どうした?』

「あ、あの……」

小野原さんの落ち着いた声が、耳に心地よい。

たったそれだけのことなのに、すごくホッとして--

「……ぅ……っ」

言葉よりも先に、涙があふれた。

彰斗に怒った時は涙は出なかったのに……。

小野原さんの声が恋しくて、涙が止まらなかった。

話したいのに、言葉が出ない。……出るのは、小さな嗚咽だけ。

『香奈、どうした?』

電話口での私の異変に気付いたのか、心配そうな声で、聞いてくる。

私は、必死で嗚咽を抑え、声を絞り出すように言った。



「…………会いたい……」







『香奈、今どこにいる?すぐ行くから』

「……っ……」

答えたいのに、言葉にならない。

『今しゃべるのが難しいなら、ラインかメールで場所を伝えてくれ。すぐに行くから』

「……は……い」

かろうじて声を出し、電話を切った。

ラインで駅名を伝えると、すぐに「どこか寒くない所で待ってて」と、返事が来た。


駅前にカフェを見付けたけど、こんな泣き顔を明るい店内で周囲にさらしたくない。

私は、建物の中には入らずに、外で待つことにした。

夜風が冷たくなり、私はトレンチコートの襟元をかき合わせ、うつむいていた。




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