クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
やっぱりヒールのある靴での全力疾走は難しい。
そんなに遠くに行ってないはずなのに、朱音さんの姿を見失ってしまった。
やみくもに探し回っても、見付からないかもしれないのに。
それでもじっとしていられなくて、こっちに行ったかも、という根拠のない勘だけを頼りに道を進んだ。
気付くと、大きな川に架かる橋の上に来ていた。
……はぁ……。
大きく息をついて、欄干に手を置く。
ずっと走りっぱなしだったから、息切れも激しいし、パンプスの爪先はしびれるし、かかとも皮膚に擦れて、痛い。
ここどこだろう……自分が迷子になって、どうするのよ……。
川の岸に沿うように、高層マンションが建ち、各部屋の窓から、明かりがもれている。
小野原さんのマンションも近いのかな……?
そう思うと、少しだけ心強くなった気がする。
私は、視線を橋の下におろした。
夜の川は、暗くて、じっと見ていると、いつの間にか吸い込まれてしまいそうな、得体の知れない恐怖が襲ってくる。
土手には遊歩道が整備され、ポツリ、ポツリ、と等間隔に配置された街灯が寂しげに辺りを照らす。
……さすがにこんな場所、夜は誰もいないよね……。
と、思ったんだけど。
……ん?
遠い視線の先に、一つの影が見えた。
……あれは……朱音さん!?
私は、急いで橋から土手へと移動した。
痛い足を我慢しながら、追いかける。
その人物は立ち止まると、川の方を見た。遠くからだったけど、そのハッキリとした顔立ちが確認出来た。
……間違いない、朱音さんだ!
さっきと同じく、うなだれてお腹に手を回すような格好で、川辺へと続く階段を下りていくようだった。
私は急いでバッグから携帯を取り出した。
「小野原さん!朱音さん見付かりました!川です!駅から反対方面の、川です!」
すぐに電話に出た小野原さんの声を待たずに、私は一方的に話した。
『川!?』
「はい、橋が近くにあります!早く来てください!」
それだけ言うと、電話を切って携帯をバッグに突っ込み、朱音さんを追う。
朱音さん、そっちは川だよ!
……嫌な予感しかしない。
それに……朱音さん、もしかして……!?