クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「朱音さん!!」

私は、土手の上から大声で叫んだ。

階段を下りきって、川辺へ進んでいた朱音さんの肩が、ビクッと震えた。

そして、振り返ったその顔に、私はハッとした。

朱音さんの頬が濡れているように見える。

……泣いてるの……?

いつも気の強い朱音さんばかり見てたから、そんな様子の彼女に驚いてしまった。

すると、朱音さんは川に向かって走り出した。

「え、あっ、ちょっと……!」

私も急いで階段を下りる。でも、川辺には大小様々な石が転がっていて、ヒールのある靴では足元が不安定になり、なかなか早く進めない。

その間にも、ジャブジャブと、水音を立てながら、朱音さんが川に入っていくのが見えた。

まずい……!

私はその場でパンプスを脱ぎ捨てた。

「痛っ……!」

ストッキング越しではあるけど、ほぼ素足と変わらない状態で石の上を踏みしめるのは、激痛ツボマッサージを受けている感覚に近いと思う。

でも、さっきよりも歩くのは安定している。それに、朱音さんを止めなきゃ、という気持ちの方が強く、だんだんと痛みは感じなくなっていった。

朱音さんは、もう腰の辺りまで水に浸かっている。

今日は昼まで雨が降っていたから、いつもより川の水量が上がってるかもしれない……!

それに、川って急に深くなったり流れが速くなったりする箇所もある……!

私は、バッグをその場に放り、トレンチコートを脱ぎ捨てると、夜の川に入った。

「……っ!」

さすがに、冷たい。

でもここで引き返すわけにはいかない……!


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