クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「うゎ、広っ……!」
小野原さんのマンションのリビングに足を踏み入れた私の第一声は、それだった。
本当に歩いて二、三分の所にある、高層マンションの十五階。小野原さんはここで、一人暮らしをしているそうだ。
結局、ノコノコついてきてしまったわけだけど……。
それにしても、一人にしては広すぎでしょ、と思うほど、開放的なリビング。2LDKらしいけど、きっとどの部屋もそれなりに広いんだろうな……私の部屋とは大違い。
「香奈、適当に座って。コーヒー入れるよ」
小野原さんがキッチンに入っていく。
「あ、私も手伝います」
と、後を追おうとすると、朱音さんが私の肩に手を置いた。
「私がやるから、あんたは座ってなさいよ」
「あ……はい」
……お客さん扱いしてくれてるのかな?
「甲斐甲斐しく手伝おうとしたりして、彼女ヅラしないでよね!」
……やっぱり、そういうことね……。
私は窓近くのソファーに腰を下ろした。柔らかくて、体が沈みそうになる。
見渡すと、白とグレーを基調とした家具が並んでいて、全体的に統一感のある印象だった。余計なものは置かれておらず、何だか小野原さんらしい部屋だ。
「何じろじろ見てんのよっ」
朱音さんがすぐ横に立っていて、視線がぶつかる。
「……すみません」
……私の方が年上なんだけど、何か完全に下に見られてるよね……。
私の前のテーブルに、朱音さんはコーヒーの入ったマグカップをコトン、と置いた。
「飲んだら帰ってよね」
「は、はい……ありがとう」
朱音さんは私の正面に座り、力のこもった目で私を見ている。
「私が今日お兄ちゃんと過ごすはずだったのに……」
「あの、私すぐに帰るから……」
……イケメンの兄に、ブラコン気味の妹……。
どこかで聞いたことのある構図だわ。まさか自分がそれに遭遇するとは……。