クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
小野原さんの歴代の彼女が、もしかしてこの妹に邪魔されてきたんじゃないのか?と思うと、何だか気の毒だ。


「さっきだって、私が急にお兄ちゃんの所に来たい、って言っても、喜んで迎えに来てくれたんだから」

「何言ってる。お前が彼氏とケンカした、って泣きながら電話してきて、俺を無理に呼び出したんだろ」

自慢気な朱音さんの話を、すぐさま小野原さんが訂正する。

……なんだ、彼氏いるんだ。兄妹の枠を越えて、妹が兄を慕ってるわけじゃないのね……。

私が安堵していると、小野原さんは自分のカップを持って、私の真横に座った。自然と、腕と腕が触れ合う。

「あっ、お兄ちゃん、何でそっちに座るの?」

「俺が香奈の横に座りたいから」

「……っ」

朱音さんはキッと私をにらむ。

……前言撤回。これ、絶対お兄さんに特別な感情持ってるよね?!

私が苦笑いで返していると、私の携帯が鳴った。

スマホの画面を見ると、志帆からのラインだ。



『早めに仕事終わったから、今から行くね~』



時計を見ると、三時だ。今からだと、志帆は三時半には私のマンションに到着する。
私は、『今、外出中なんだけど、すぐ戻るね』と返信した。

「すみません、友達がもう来そうなので、もう帰りますね」

朱音さんの鋭い視線に、そろそろ居心地が悪くなっていた私にとって、志帆からの連絡はナイスタイミングだった。

「うん、それがいいよ!」と、朱音さんは嬉しそう。

はいはい。

私は残りのコーヒーを飲み干すと、マグカップを持ってキッチンに入った。

「そこに置いといていいから」と、後から来た小野原さんに言われたので、そのままシンクに置いた。洗おうか迷ったけど、また朱音さんにごちゃごちゃ言われるのは避けたい。

「香奈、送るよ」

「えっ、いえ、私、自転車ですから。すぐに帰れますし」

「あれ、折り畳めるだろ? 車に載せられる」

「でも、大丈……」

大丈夫ですから、と言おうとして、言葉が途切れた。小野原さんの手が私の腰に回され、体をグッと引き寄せられたからだ。





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