クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「あれ、香奈ちゃん、手伝ってくれてるの?」

「うん。これぐらいしか出来ないけど」

「もう八時半だよ。時間、大丈夫?」

「あ……本当だ」

時計を見て、確認する。

「香奈ちゃん、遅くなるといけないけら、もういいわよ。ありがとうね。智之、香奈ちゃんを送っていってあげなさい」

おばさんの言葉に、トモくんがうなずく。

「俺、酒飲んでるから、車は出せないけど、そこまで一緒に行くよ」

「え、いいよ、そんなのトモくんが帰るの遅くなっちゃうから、ここでいいよ。それに、仕事で疲れてるでしょ?」

「ダメだよ。夜道は暗いから。女の子の一人歩きは危ない」

トモくんは私の意見を却下すると、さっさと玄関に向かってしまった。

「香奈ちゃん、またきてね。皆さんによろしくね」

「はい。お邪魔しました。ごちそうさまでした」

おばさんにお礼を言ってから、トモくんと一緒に玄関を出た。





街灯だけが照らす静かな住宅街を二人で歩く。

並んでみて改めて、トモくんの背が高くなったことに驚く。それに、夜道は危ない、なんて女の子に対する気遣いも身に付いちゃって、大人になったのね……。前はあんなに子供だったのに。

「トモくん、ゴメンね」

「え?何が?」

トモくんは歩きながら、振り返る。

「お見合いのこと……うちのお母さんが変なこと言って。私はお見合いなんかしない、って何度も言ってるんだけど、聞いてくれなくて」

「ああ、そのこと。俺でどうだろうか、って言い出したんだのは父さんなんだし、香奈ちゃんが謝ることないよ」

トモくんは笑ってくれてる。ああ、何て良い子なの……。

「……ホントにごめん」



「いいんだよ。それを聞いて承諾したのは俺自身だし」

え……?


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