クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
私はトモくんの腕を掴んだ。

「ダメだよ、トモくん!いくら大人たちに頼まれたからって、そんな人生の大事な選択肢を間違えちゃ!今は、忙しくて出会いとか無いかもしれないけど、まだ若いんだし、これからトモくんが大事にしたい人と出会えるよ!」

「……」

トモくんはあっけにとられたように、口を開けていたけど、やがてククッと笑い出した。

「若いって……香奈ちゃんと一つしか違わないのに」

「あ……そうだね……」

オバチャン発言だったかな……。

「今のって、俺のちょっとした告白だったんだけどな」

「……告白って?」

「香奈ちゃんのそういう鈍感で純粋なとこ、昔と変わってないんだな」

……何の話だ?

「いくら親に頼まれたからって、嫌なものは嫌だと断るよ。香奈ちゃんだから、この話受けようかと思ったんだ。俺の初恋、香奈ちゃんだったから」

「ええっ!?」

夜の住宅街の真ん中で大きな声を出してしまい、私は慌てて口を押さえた。

「ご、ごめん……」

「俺の方こそ、驚かせて。……気付いてなかった?」

「……うん、全然……」

「だろうね。……香奈ちゃんは俺のこと、弟みたいに思ってたのは知ってたよ。でも、その頃は勇気が無くてなかなか言えなかった」




しばらく二人とも無言で歩く。

こんな時、何を話していいか分からない。さすがに、今も私が好きってことはないよね……。あれから何年も経ってるし、私はともかく、トモくんはいろんな出会いがあったと思うから。

やがて大通りが見えて、何となくホッとした。バス停には誰もいない。

時刻表で次のバスを確認していると、トモくんが言った。

「香奈ちゃん……今度、二人で食事でも行かない?」

「え?」

「せっかく再会出来たし、今日は親がいて、ゆっくり話せなかったから」

「……」

……二人で、ってことは、デートの誘い?

「あ、もちろん、親に言われたからじゃないよ。俺の意志だから」

……確かに、昔のトモくんは弟が一人増えたみたいな感じだった。今もその感覚は変わらない。今後、また家族で会うかもしれないことを考慮して、幼なじみとしてなら、ってことで一回は食事に付き合うべき……?

私は顔を上げた。トモくんの眼差しは真剣だ。



……違う。トモくんはもう大人の男の人だ。私もちゃんと……言わなきゃ。

「ごめんね……。私、二人では会えない」

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