婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
あまり話さずにいると、余計な心配をさせてしまいそうで心苦しい。
でも樹さんが黙って目を逸らしたから、とにかくこの場は乗り切れたようで、ようやくホッと肩の力を抜いた。


四人で軽い乾杯を済ませてから、業務中ではありえない豪華なランチにフォークを進める。
食前酒を飲み干した社長が、私を見遣って口角を上げた。


「で、どうだ? 帆夏さん。お試しなんて君に失礼だとは思っていたんだが、一応当事者の樹の意志も尊重しなきゃいけなかったんでね」


社長の言葉は私を気遣うものだったけど、樹さんにとっては白々しかったに違いない。
食前酒のグラスを傾けたまま、樹さんが無言でジロッと社長を睨むのがわかった。


「い、いえ。本当に、私……」

「君は今、『幸せだ』と言ったけれど、たとえばそう思うことがなにかあったとか……?」


探るような視線を向けられて、私は反射的に身体を強張らせた。
樹さんからは『余計なこと言うんじゃねーぞ』というオーラが感じられる。
そして、向かい側の父からは期待に満ちたキラキラした瞳を向けられ……。


――む、難しい……。


ありのままはダメ。
嘘をつくのもダメ。


それなら、なにをどこまで話せばいいの~!!
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