婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
スーツ姿でも十分わかるけれど、引き締まった生身のボディが私の視界にズンズン入り込んできて、私は大きく目を見開いてしまう。
ドキドキドキ……と怖いくらい心臓が騒ぎ出す。


「ほら、荷物貸せ……」

「きゃ、きゃああああっ!!」


思わず後ずさり、私はドアにドンと音を立てて背をぶつけていた。


反射的に上げていた絶叫に、私の目の前で樹さんがビクッと身を震わせて一瞬動きを止める。
そして、とても不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。


「……なんだよ、その悲鳴」

「だだだだ、だって……! 樹さん、なんでそんな格好でうろついてるんですかっ! わ、私に近寄ってくるんですかっ……!!」


ぎゅうっと目を閉じたまま反論すると、「はあ?」と呆れたような声が返された。
少し気を鎮めて、恐る恐るゆっくり目蓋を上げると、樹さんはキュッと唇を結んでいた。


「なんでって……別に家で過ごす時くらい、楽な格好したいだろ。お前に近寄ったのは、荷物持ってやろうかと思っただけだけど」

「……えっ……」


返された言葉に何度もパチパチと瞬きをする私に、樹さんは口角を上げてちょっと意地悪な笑みを浮かべる。
そして、


「……は~ん……なんか変なこと期待したのか?」
< 20 / 236 >

この作品をシェア

pagetop