婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「なのに、まさか春海君が帆夏ちゃんとデートするだなんて、天変地異の前触れかって信じられなかった。だから、ちょっと意地悪してでも、春海君がどういうつもりか探りたかったのよ。……ごめんね」


これでも瞬間的に好きになったことのある男だから、と続けた青木さんに、そっと上目遣いの視線を向ける。
私は身体の前で両手を組み合わせ、一度躊躇ってから唇を開いた。


「どんなつもりもなにも……樹さんは私のことなんか本気で相手にしてくれてませんよ。『お前の好きはママゴトだ』って」

「……ママゴトお~?」

「言われてみれば、樹さんにとっては確かにそうだったかもしれません。ちゃんと朝ご飯食べてとか、お風呂の準備出来てますとか、お夕飯なにが食べたいですか、とか」


思い返していくつも指折り挙げてみる。
確かに『ママゴト』っぽい私の行動を。


「でっ……でも、それはっ! 樹さんの生活習慣をちゃんと見直して考えようと思ったから! た、確かに樹さんのペースとは全然違ったかもしれないですけどっ……」


肩を強張らせてそう叫びながら、私は涙に詰まって声を途切れさせた。


最初はパニックするだけだったこの生活も、もうすぐ一ヵ月経つ今――。
最初の頃の自分とは、気持ちも考え方も変化してるのがわかる。
< 202 / 236 >

この作品をシェア

pagetop