婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「えっと……樹さんは突然結婚って言っても怒るだろうから、ゆっくり折を見て『婚約者』って紹介するって。私、おじ様……いえ、社長から言われてて……」


樹さんに肩を掴まれたままで、ドキドキしながら必死にそう説明した私に、樹さんは再び烈火の如く怒り出した。


「やっぱつるんでんじゃねえか! お前が今年うちにコネ入社して、俺と同じ海上政策部に配属されたのだって、オヤジの策略だろ!?」

「い、いえっ! それはどっちかって言うと私の方が父に頼んで……」

「なんでっ!」

「だってそれはっ……」


会話を応酬させるうちに、樹さんの顔が再び近付いてくる。
思わずごくっと唾を飲み込む私に、樹さんはピクッと眉尻を上げた。
キュッと引き結んだ薄い唇を、私はついジーッと見つめてしまいながら……。


「言われた通り、正式にご紹介いただくのは待ちました。でも、私、少しでも早くお会いしたかったんです。だって……この先一生連れ添う旦那様ですから……」


頬を赤らめたまま恥らいながら呟くと、樹さんは私の目の前でがっくりとこうべを垂れた。


「一生って……生駒、なんでそんな従順に受け入れてんだよ? こんなのただの政略結婚じゃないか。俺より先に知ってたって言っても、お前の方だって勝手に決められたんだろ? なのに……」
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