ひと月の妹
薬指に光る婚約指輪
佐々木圭さんは私の手にそれをはめた。
「変な気分ね。」
司さんとは指輪つけなかったから・・・
他の人が私の指に最初にはめるなんて
「指が囚われた人みたい・・・」
司さんに・・・もらわなかったわけじゃない・・
お互いつけなかっただけ・・・
「・・・それもやっぱり運命なのかな?」
麻美さんには断ってと言っても
自分の部屋に元々あったものだけど・・・
わたしの部屋から持ち出してきた
いくつかの私物に司さんから貰った
『婚約指輪』
今は箱の中で揃って眠っている。
「兄さんの部屋から勝手に持ち出してきちゃった・・・」
司さんの部屋の金庫の中に
誰にも思い出してもらえず
一人ぼっちで置き去りは
可哀そうだったから・・・
「せめて箱の中で揃って一緒にいてもいいわよね?」
彼の部屋の金庫の鍵もここに置いている。
おばさまがうるさいから金庫の鍵が
「指輪をはめない代りだ!」
そう言って鍵をくれた司さんを思い出した。
「ごめんね。指に・・はめてあげられなくて・・・」
揃った指輪を眺めてそっと指で触った。