ひと月の妹
真紅の薔薇のドレスの中身はとても美しかった。

そのすべてがまるで自分のために存在するかのようだった。

それなのに女に投げかけた言葉は辛辣だった。

「これが俺なりのひと月だけの妹の可愛がり方だ!」

真紅の薔薇のドレスを着た女をさらうように

自分のマンションに連れてきていた。

驚くでも叫ぶでもなく女は司についてきた。

紙切れの上ではきちんとした妹なのだ。

それなのにその女に手を伸ばさずにはいられないのだ・・・

おふくろや佐々木財閥の御曹司が知れば騒ぎになるだろう

それなのになぜ自分はこの女を欲しいと思うのか?

ひと月後、女はマンションをでていった。

ひと月の間、自分のモノだったのに誰も何も騒がなかった。

それからあの女は佐々木財閥の佐々木圭と結婚した。

ひと月もあの男に会わせなかったのに

佐々木圭はどれだけあの女に惚れているんだ。

ひと月の間あの女の名前を一度も呼ぶこともなかった。 

俺の事はいつも「紫藤司さん」とそう呼んだだけのその女

おふくろが俺の政略結婚話を決めてきた。

白いゆりのドレスを着るような女と結婚することになるだろう

あの真紅の薔薇は俺のモノになりはしない。

ただそれだけのことだ。

 

 
 



 

 

 
 
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