ひと月の妹

わたしたちは・・・ 
 
わたし達の婚約の話をするために

四人で会うはずだった。

司さん、わたし、星(アカリ)ちゃん、麻美さん

司さんの車がダメになり、彼は仕事に行き

麻美さん所有の車で二人が迎えに来た。

麻美さんも仕事が急に入り、その日

ちょっとしたおふざけでわたし達は

それぞれのカバンと免許書入りのお財布を

各自が交換して別れた。

わたし達は三姉妹の

「三つ子そっくりでいけそうだもんね。」

と笑いながら

その時は星(アカリ)ちゃんの事情など知らず。

残った 星(アカリ)ちゃんとわたしで

星(アカリ)ちゃんが麻美さんの車を運転して

激しく降る雨の中 

車は違う未来に進んでしまった。

星(アカリ)ちゃんは麻美さんの免許書を

わたしは星(アカリ)ちゃんの免許書を

仕事で帰った麻美さんはわたしの免許書を

そうしてすべての事故は起こったんだ。


事故後、目覚めたわたしに鏡を見せながら

紫藤佳代子はこう言った。

「これからは司さんの妹として生きてちょうだい。」

「司さんは星(アカリ)さんが この世に

居ない事実を受け止められないの。お願い。」


苦しむあの人はわたしの事だけを忘れてしまった。

真紅の薔薇のドレスは星(アカリ)ちゃんが好きなものだった。

本当はあの人は星(アカリ)ちゃんの事がずっと好きだったんだと思う。

 

だから、あの人は真紅の薔薇のドレスを着た人を好きになった。

他の人が気づいていない。わたしだけが気づいた
 
漆黒の黒い瞳の魔物の哀しい真実

                完
 

 

 


 

 

 
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