夕闇がきみを奪う前に
病院の中に入って、ナースステーションにいた看護師に「今日って何日ですか?」と尋ねた。

「今日ですか?」

看護師は少し驚いた顔をしたが、すぐに答えてくれた。



「今日は、10月7日です」


10月7日。


どくんと心臓が嫌な音を立てた。

冷汗が止まらない。


「あの…澤村あかりさんの病室って、どこですか?」

「澤村あかりさんですね、少々お待ちください」


看護師は奥に戻って調べてくれた。

あいつが20歳になる年、つまりあいつが亡くなった年、あいつは病室を移った。3階から、5階へ。

だからあいつの病室が分かれば、今がいつの10月7日なのか分かる。


俺の中にはひとつの仮説があった。

直感的で、根拠も脈絡もないけれど、たしかにこれしかないんじゃないかって思える仮説。

自信がないが、当たっている気がする。


こういうときに限って、嫌な予感ってもんは当たるから。


看護師は「お待たせしました」と戻ってきて俺にこう伝えた。



「澤村さんの病室は5階です」



ほら、な。





今日は10月7日。


それはあいつの20歳の誕生日で、


あいつが亡くなる日。



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