恋愛の始め方
静かにドアを開け、中へと入る。

個室部屋なこともあり、お母さんと繋がっている機械音がヤケに鮮明に響く。

カーテン越しに見える直哉の背中は、凄く疲れているようだ。

そして直哉の口から、自然とため息が溢れ落ちる。


「なぁ、お袋。俺、もうすぐ結婚すんだよ」


此間、そんな話をあたしにもしてたな。


「式の準備も結構進んでて、日取りも決まったんだ」


そうなんだ。

その式って、あたしも参加するのかな?

式の案内なんて、来てなかったと思うけど。


「でも、辞めようかと思ってる」


なんで?!


「お袋のことをこんな風にして、自分だけ幸せになるなんて、ズルいよな」


こんな風にって、別に直哉の責任じゃないじゃん。

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