恋愛の始め方
「それなのに、志乃は一言も教えてくれないし」


不貞腐れたように、かなは口を尖らせる。


「怒んないでよ」

「志乃、いっつも教えてくれないじゃん。病院変わった時も、また戻って来た時も。そして、また別な所に行くんでしょ?」


寂しそうに、かなは小さなため息を零す。

そんなかなが、可愛いと思ってしまう。


「かな、可愛いね」

「茶化さないでよ!」


茶化してるわけじゃないんだけどな。


「ちゃんと話す。じゃなきゃ、かなのこと誘えないし」


そう言い、あたしはニコッと笑う。


「病院変わったのは、お母さんの手術をする為だった」

「お母さんって、堂島先生の?」


直哉のお母さん=あたしのお母さんだと、かなはわかってるかな?

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