恋愛の始め方
「なぁ、中見ていい?」


間宮は視線で、診療所を指す。


「別に、良いけど」


あたしは診療所のドアを開け、間宮のことを中へと通す。

間宮は何が楽しいのか、興味深々に中を見渡す。


「必要最低限って感じだな」

「まぁね。救命と違って、そうそう患者も来ないし」

「人口も少ない町で、引っ切り無しにコール鳴ってる方が怖いだろ」


・・・確かに。

もしそうなら、こんな診療所じゃなくてちゃんとした病院が建っているだろう。


「もう、こんな時間か」


腕時計を見ながら、間宮は小さなため息を溢した。


「ありがとう、送ってくれて」


最後の言葉でもないのに、その言葉を言うだけで、喉の奥がカッと熱くなった。

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