どん底女と救世主。
「希ちゃん?」
扉を開け、資料室に入って来たのは希ちゃんだった。
「どうしたの?希ちゃんも資料取り?」
上から呼びかけても、希ちゃんは何故か黙っている。
その様子を不審に思い、じっと希ちゃんを見つめていると、ふと足元が目に入った。
希ちゃんが履いているのは、見覚えのあるパンプスだ。
エナメルピンクのハイヒール。あの日、玄関に転がっていた靴。
嫌な予感がした。
「先輩こそ何してるんですか?」
かなりの間があって、ようやく希ちゃんが口を開く。
「深山課長の仕事の資料集めだけど」
「それって深山課長への点数稼ぎですか?」
「は?」
突然の暴言とも呼べる発言に、私も思わず棘のある声が出てしまう。
一体、いきなりなんなの?
「先輩、勝さんと別れて今ひとり暮らしですか?なら、先輩が家に帰らなくても誰も気づきませんね」
「え、どういうこと」
意味が分からず呆然としていたら、突然希ちゃんがはしごを外し出した。