どん底女と救世主。
残業を終えて、家に帰り着き鍵をまわしたとき、なんとなくだけど嫌な予感がした。
がちゃり、とドアを開けるといつもと違う部屋の空気に背筋がぞくりとする。
なに、このハイヒール。
玄関には、私のものではないハイヒール。もちろん、勝のものでもない、はず。
ピンク色のエナメル素材のハイヒールは、私の買ったことのないブランドのもの。
脱ぎ捨てたように、玄関に転がったハイヒールと勝の革靴はどういう状態でふたりが家に入って行ったのかがなんとなく想像できる。
嫌な予感がして背中に冷や汗をかき始めたことを自覚しつつ、意を決して廊下を進む。
そして、リビングへと繋がる扉を開いた。
「…んっ」
案の定、目に飛び込んできたのは、リビングの奥のソファの上で情熱的なキスをする勝と髪の長い女の姿。
ヤっている。とまではいかないものの、相手の女のブラウスは見事に乱れ、右肩に至っては、完全にはだけて出てしまっている。