どん底女と救世主。

結局のところ、目的は海外出張のお土産を届けに来たというお姉さんは、お洒落で高そうなチョコレートを置いて、誤解をしたまま帰ってしまった。


外資系の金融会社にお勤めだと言うお姉さんは、まさしくキャリアウーマンらしいかき上げバンクの気が強そうな美女で、この後も仕事の会食があるらしい。


帰り際、課長が電話で席を立ったタイミングでお姉さんは言っていた。


『なんか今までの潤の彼女とタイプが違う』


と。それを聞いた私は、完全に興味本位で、


『ちなみに今までの彼女ってどんな感じの方たちだったんですか?』


と、食い気味に聞いてしまった。だって、気になったんだもん。



『うーん、なんかキツイ感じの子が多かったかな。私みたいな?
まあ、仕事ができます!って感じかな。私が知ってる限りでは』


なんだか想像通りかも。
頭の中で綺麗なキャリアウーマンと課長が浮かんだけど、なんとも絵になる。


『冴島さんみたいな、家庭的で暖かそうな人に目が向いたってことは潤も結婚を意識しだしたのかな』


確かに深山課長って、自分がバリバリ働いているから、結婚したら奥さんに仕事辞めて家に入ってくれって言うタイプかも。亭主関白そうだし。


勝手にそんなことを考えてると、


『ま、弟をよろしくね』


ぽん、と肩に手を置いたお姉さんの笑顔に募る罪悪感。


嘘ついてごめんなさい。私と課長はただの上司と部下なんです…。


そして、残念ですけど弟さん、私と一緒に暮らしてる時点で結婚願望薄そうです。

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