「嘘だよ」とは言えなかった。
私はいつものように学校に行った。
いつものように自分の教室に行き、いつものように自分の席に着いた。
だけどいつもとは違う、気持ち。
気づいてしまった本当の、気持ち。
昨日の放課後、彼氏の春人の部活が終わるまで教室で待っていた時に気づいたもの。
サッカー部の春人はグラウンドで練習しているので私は窓を開けて外を眺めていた。
ボールを追っかけて走る姿はとてもカッコいい。
本当にカッコいい。
そんな事を思いながら私が見つめていたのは春人。
だったら良かった、本当に。
私が自然と目で追っていたのは春人の友達の松原君だった。
松原君、松原君。
何度も何度も心の中でその名前をなぞるように呟いてしまっていた。
夕焼けのオレンジがそんな私を包む。
持ってはいけない感情を夕焼けのオレンジが照らしているようだった。