マスカラにひかりをこめて
❶ ひかり方を知らない


「蛍さぁ、アンタ女でしょ?
もう少し女子を意識したら?」



華の金曜日、一週間のお勤めを終えてチェーンの居酒屋でビールを飲んでいる私。


仕事をやりきった後に飲むこの一杯が本当にたまらない。
グラスを傾けてあおると泡が唇について、乾ききった喉元を冷たいビールが通り、ほのかな苦味と泡の甘さが口元に残る。


行儀が悪いのは承知で唇についた泡を舐める。
あーこの瞬間のために仕事してると言っても過言ではないわ。


あほかと自分でも思うけど、私はこの一杯の美味しさを引き立たせるため、金曜は午後からは水分をなるべくとらないようにしている。
毎週金曜日は仕事が終わる頃に合わせてカラッカラに喉を乾かし、至高の一杯に備える。

これが今では私の中の決まった儀式みたいなものになっている。


本っ当に美味しい。幸せ〜〜〜〜!!!!


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