とある国のおとぎ話

魔法の呪文





「いくら同期で仲が良いと言っても、任務なんだ。話せないことぐらいわかるだろう。少佐が就く仕事の……」



「わかってる!もう、冬馬くん。お説教が長い!わかってるわよ。……ただ、何だか寂しくて。冬馬くんも藤崎君も遠くにいるみたいで」



「甘ったれるな。如月、お前は佐官級以上の役職に就いてるんだ。もっと自覚を持て。そんなだと、いつか足元をすくわれるぞ」



 薬が効いてきて如月の瞼が重たそうに閉じ始めたが、精一杯見開いて俺を睨みつける。



「冬馬くんは可愛げが、なくなった!昔は可愛かったのに。背も、小っちゃくてさ」



「如月。いつの話をしてる。お前の身長なんて、とっくの昔に……」



 言いかけたところで、強く遮られる。


 冬馬くん、と。


 そして、もう一度、俺の名を呼ぶ。


 朦朧としたあやふやな声なのに、強く、重く俺に届いた。



「冬馬くん。名前で呼んでよ。二人きりの、時だけで良いから。お願い、だから」



 そう言い、如月は俺の額に口付ける。



「……不安が消えるおまじないか?今の俺に必要があるとは思えないが」



 限界が来たのか、焦点が合わなく視線を彷徨わせている。



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