年下男子とリビドーと

おそらく、一足遅かった。

彼には、紘希がわたしを抱き寄せている風に見えたに違いない。

わたしは青ざめ視線を落とした。
この気まずい渦中に、更に爆弾を落とすなんて……。


成海くんは少し真顔になった後、口を開いた。

「お疲れさまです」

「お、お疲れさま……」

わたしは挨拶を返すだけで、心臓がばくばく波打っている。

「今見たこと……誰にも言いませんから。安心して下さい」

成海くんが笑顔を向けて来た。
その言葉に、心臓が凍り付く。

そして、静かに去って行った。

ショックのあまり、その場に崩れ落ちそうになったわたしを、紘希が支えた。
涙が再び流れた。

「あいつか」

紘希が成海くんの後ろ姿を目で追いながら、つぶやく。

「とりあえず移動しよう。他の人にも見られたりしたら、余計まずいだろ?」

紘希も気まずそうな顔をして、歩くように促された。

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