年下男子とリビドーと
まだ開いているカフェに入った。
わたしは拒否する元気もなく、ただ付いて行った。
「腹減ったろ。何か食う? おごるから」
「……いらない」
テーブルの上に視線を落とすわたしに、彼は困ったように微笑んで、店員さんにアイスコーヒーを2つ注文した。
「……悪い。嫌がらせするつもりはなかった」
頭上から紘希の声。
運ばれて来たコーヒーを口に含み、わたしは少しだけ落ち着いて、溜息を吐いた。
紘希の顔を見上げると、切なそうに微笑んでいる。
「……ごめん……わたし、自分のことばっかり……」
わたしの頭は、多少現実に戻って来たようだ。
紘希はわざわざ話をするために会いに来てくれたのに、なんて態度を取っているんだろう。
「いや、俺もいきなり来て悪かったよ」
しばし沈黙が流れた後、紘希が口を開く。
「言いたいことあったら全部言ってくれていいよ。覚悟出来てるから」
「覚悟……?」
わたしは紘希をじっと見つめ、零した。
「この1ヶ月、ずっと考えて、出した結論。どんな言葉も、どんな莉南も受け止めるって」
紘希は瞼を伏せたが、口元は穏やかに微笑んでいた。
こんな紘希は見たことがない気がして、胸を打たれた。