願うは君が幸せなこと
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家を出る直前に選んだ今日の靴は、持っている中で一番身長が高くなるピンヒール。

世の中の女性の半数くらいは、気合いの入り方とヒールの高さが比例しているのではないかと、個人的に思っている。
実際どうなのかはわからないが、少なくとも私はそうだった。


一人暮らしのマンションの最寄駅から電車で約十分、高層ビルが立ち並ぶオフィス街に私の勤務先がある。

最上階は三十階まであるそこは、入り口の自動ドアを抜ければ美人の受付嬢が出迎えてくれる、世界でも名の通ったIT企業なのである。


午前八時。
コツコツと靴の音を鳴らしながら背筋を伸ばし、会社の入り口へと向かって歩く。
こうしてまた、一日が始まる。

今日はいつもより足取りが軽い。
理由は、このヒールを履いてくることになった原因。
要するに、仕事を終えるとデートの約束が待っているのだ。


頭の中で軽快に流行りのアイドルの曲を再生させながら、自動ドアをくぐり、受付の女の子と目を合わせた。

「おはようございます、瀬名さん」

「おはようございます」

入社四年目にもなると、受付の子もすっかり名前を覚えてくれている。
瀬名祐希(せな ゆうき)と書かれた私の社員証を見ることなく、笑顔で名前を呼んでくれるのだ。

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