夏色の空
「何時からだったっけ」
「…6時、…半?」
「曖昧だな」
「…覚えてないよりマシ」
「それもそうか」
「そうだよな。うん」と一人で納得しながらパンをかじる成宮。
…今日はコイツの頭が心配だ。
どうかしてしまってるんじゃないかと思う。
いつもそうだけど。
「うっし、食い終わったぞ。高木、早く行って早く練習始めようぜ」
おかしいけど、本質は変わってないらしい。
こいつが野球好きだという本質が変わってなかったら、別に変ってないということだ。
ほっときゃいい。
元からこいつはバカだからな。
「ん」
残っていたパンを口の中に詰め込んで、カバンを持って靴をはいて、〝ホワイトスター〟から出た。
駐車場から自転車を引っ張りだす。
シャー…と自転車を漕ぐのは気持ち良い。
たとえ、自転車がギコギコ壊れかけだとしても、坂道を下る時とかは、大好きだ。
途中でコンビにに寄って、肉まんと昼飯とお茶を買って、肉まんを食べながら学校まで行く。
慣れってすごいもんだ。
今なら肉まんを食べながらでも、安全運転が出来る。
自転車置き場にとめてから、部室まで歩いていく。
いつもはこうだった。
いつもはこのはずだった。
「〝使用禁止〟…?」
「何ソレ」
いや、俺に聞かれてもー、と困ったふうに成宮は言った。
部室のドアの部分に、〝使用禁止〟の札がかかっていた。
昨日の放課後…は見てないけど、昨日の朝に見たときはそんなものかかってなかった。